お墓の購入は一生に一度あるかないかのことですよね。
中には先祖のお墓に入ることが決まっていて、経験しないまま一生を終える人も少なくありません。
今回はお墓を初めて購入する人のために、具体的な体験談を参考にしながら探っていきます。
誰でもはじめてのお墓購入
いつかは自分でお墓を買わなければと思っていても、いざとなると戸惑ったり悩んだりすることが多いものです。
お墓の購入に慣れている人などいないのですから当然のことですよね。
それではいったい何から手をつければいいのでしょうか。
通常ですと、お墓を建てるまでの流れは次のような順番になります。
- 家族と話し合い、建てたいお墓を具体的に決めておく
- 条件に合う墓地を選んで契約をする
- 石材店にお墓の施工工事を依頼する
- 完成した後に開眼法要(開眼供養)を行う
お墓に魂(みたま)を入れるための開眼法要は、宗教・宗派によっては執り行わないこともあります。
また生前に建てた場合は必ずしも必要ではありませんが、生前墓の建立はおめでたいこととされていて、慶事として祝われます。
でもそれはお墓を建ててからの話ですね。
まずは墓地を選ぶ前に、建てたいお墓を決めておく必要性から考えていきましょう。
墓地を選ぶ際には費用だけでなく、交通の利便性、管理のレベル、そして自分が望むお墓が建てられるかが一般的な判断基準となりますね。
お墓は一生ものです。
他にいい墓地が見つかったからといって簡単に引っ越しなどはできません。
墓地と契約して「永代使用料」を最初に支払えば、後は管理費(維持費)を納めるだけで済みますが、これは墓地の区画を使用する権利を得ただけの状態なのです。
永代使用料の相場は30~80万円、墓地によっては更に高額になる場合もあります。
候補の墓地に足を運び、墓地や施設内が綺麗に手入れがされているかをチェックし、複数の候補を比較検討してから慎重に選びましょう。
そしてそのような理由からも、墓地を選ぶ前に建てたいお墓を決めておくことが大切となってくるのです。
例えば背の低い横長の洋型タイプの墓石は、伝統的な和型タイプより石材の量が少なく済むことがほとんどです。
費用が安く耐震性もあって人気ですが、墓地によっては認められないこともあるんですよ。
そして石材店選びにも制限がある場合があります。
墓石の相場は約150万円前後という数字が出ており、本来なら石材店も比較検討したいところですよね。
しかし寺院墓地や民営墓地など、公営墓地以外では業者を自由に選べないケースが見受けられ、予算をオーバーしてしまうことも少なくありません。
良心的な石材店ならアフターケアも問題ないでしょうが、「建てたら終わり」とばかりの不親切な業者には出くわしたくないものですね。
更に墓地を選ぶ前に決めておきたいお墓の形には、供養の形態も含まれます。
「永代供養」という言葉を耳にしたことはあると思いますが、少子化や未婚率の増加が深刻化する現代では、お墓を選ぶ際に欠かせないポイントとなっています。
古来からある伝統的な一般墓では、代々長子が承継者となってお墓を守ってきましたよね。
今ではその形式自体が機能しないほどに、承継者が途絶えたり墓離れが進んでいたりと、墓地にとっても厳しい社会問題に発展しています。
承継者がいない夫婦、承継者がいても結婚しない、或いは娘しかいなくて嫁いでいるなど、家庭によっては将来自分たちのお墓が「無縁墓」になる不安も抱えているのです。
そこで近頃多く利用されているのが、合葬墓・共同墓・合同供養墓とも呼ばれる「合祀墓(ごうしぼ)」です。
いきなり他人と一緒に埋葬されるのかと眉をひそめる人もいるでしょうが、この合祀墓には個人用のものもあり、家族・夫婦・個人でお墓を建てることもできるんですよ。
お墓を建てるとなると、見た目は一般墓と変わりはありません。
違うのは承継者がいなくなってからの管理方法にあります。
承継者がいなくなるということは、墓地に管理料が支払われなくなるというこになりますよね。
承継者がいても支払われないケースはありますが、だからといって墓地側がすぐにお墓を撤去できるわけではありません。
墓石が老朽化して草も生え放題といったような、何年も放置されているお墓を見たことはありませんか?
景観を損ねるだけでなく、草は隣のお墓まで広がって迷惑にもなりますし、墓石が崩れるなどの心配も出てきますよね。
墓地が定めた年数を経て遺骨はいずれ合祀という形になりますが、墓石の撤去費用は高く、負担できない公営墓地では放置されたままという問題も発生しています。
永代といっても、こちらも墓地が定めた年数によって最終的には合祀という形になります。
早ければ十三回忌、長くて五十回忌というところもありますが、三十三回忌と定めている墓地が多いようですね。
永代供養料も最初に一度支払うだけで、相場は形態によってかなり変動しますが、10万円前後から100万円までの間が一般的な数字です。
では基本的なポイントをおさえたところで、お墓を購入した人たちの体験談を見ていきましょう。
購入者の体験談を見てみよう
お寺に護られている安心感(東海地方在住 30代男性)
父が急死したのは私が30歳になったばかりの頃です。
葬儀は何とか終えたものの、父は次男でお墓は自分で建てなければなりませんでした。
「お墓建てないとなぁ」という程度の軽い会話をしたことはありますが、まだ具体的に話し合ったことすらなかったのです。
私も母もどうすればいいのかわからず、葬儀からいろいろと世話をしてくれた本家の伯父に相談しました。
そうして伯父に教えてもらいながら、本家と同じお寺に我が家のお墓を建てたのです。
自宅から車で30分ほどの場所ですが、先祖の墓参りに行き慣れたお寺で、私も子供の頃から住職さんと顔馴染みです。
墓地の費用は工面できましたが、墓石代はすぐに支払うことができず、ローンを組むことになりました。
ちなみにお寺に支払った使用料(永代使用料)は80万円、墓石代は工事などの諸費用も含めて約200万円です。
「お寺はお金がかかるのに」と言う人もいましたが、私は数年経った今もそうしてよかったと思っています。
お寺以外の墓地と違ってお布施などの費用もかかりますが、先祖や親類と同じ墓地にあるため、墓参りの移動の面で利便性があります。
何よりも、お墓が常にお寺に護られているという安心感。
これはお金の価値に変えられるものではありません。
それに私はまだ独身です。
もしも将来、墓を継ぐ者がいなくなったとしても、永代供養によって私たち家族は無縁仏になる心配はないのです。
人生はこの先どうなるかわかりませんが、お墓に関する不安がないだけでも気が楽です。
父もきっと満足してくれているに違いありません。
生前墓が新たにした絆(東北地方在住 40代女性)
私は同い年の夫と2人暮らしで子どもはいません。
どちらも実家は長男が継いでいて、私たちは将来、合祀墓(共同の永代供養墓)に入れてもらうつもりだったのですが、兄弟たちに反対されてしまいました。
「意志は尊重したいけど、最初から他人と一緒の場所に埋葬されると思うと悲しい」と言うのです。
価値観の違いがあるのは当然ですが、兄弟やその子供たちの負担になりたくないという私たちの考えは、逆に彼らを悲しく、寂しい気持ちにさせるものだったのです。
そこでお墓について調べ直し、私たち夫婦が最終的に選んだのが永代供養の「夫婦墓」です。
元気なうちに兄弟たちにも安心してもらおうと、昨年建てたばかりです。
2人だけの利用なので区画は小さめで、震災後ということもあり、墓石は耐震性のある横長のタイプにしました。
民営墓地で永代使用料は約70万円、年間の管理料は8千円弱です。
墓石は複数の墓石店を比較し、60万円で建ててくれるところを選びました。
普通の縦長のお墓より石の量が少ないため、その分、安くできるのだそうです。
全体が芝生の墓地なので景観も美しく、建立祝いでは「自分もこっちに入りたい」と甥っこが冗談を言うほどした。
子どもに恵まれなかった私たち夫婦ですが、心配してくれる兄弟、親戚たちとの絆を改めて感じさせてくれた生前墓の建立でした。
心の拠りどころ(関東地方在住 50代男性)
近くに新しい民営の墓苑ができ、私がそこにお墓を建てたのは3年前です。
先祖代々の墓は車で2時間ほどかかる地にあり、親類縁者も近くにいなくなっている状態でした。
墓じまいとなると家族だけでなく、墓参りに来てくれる親戚たちにも話を通しておかなくてはなりません。
やはり皆「墓参りが遠い」と思っていたのは同じで、反対は一切ありませんでした。
墓地の永代使用料は100万円、墓石代は180万円、年間管理料は1万円です。
完成を間近に控えた頃でした。
いとこの男性が離婚をし、墓じまいをしないでほしいと言い出したのです。
彼は父の妹の一人息子で、叔母はシングルマザーでした。
経済的にゆとりのない暮らし向きだった上に、50代という若さで亡くなり、父が継いでいた実家のお墓に埋葬されました。
その後、いとこは結婚して家庭を持ちましたが、常に借金を抱えた状態が続き、離婚の原因となったようです。
「最初は賛成したが、やはりあのお墓がなくなってしまうのは寂しい」というのが理由で、決して嘘ではないでしょう。
しかし離婚をして慰謝料も膨らみ、彼の生活はますます厳しくなっている様子です。
「自分が将来入るお墓」を考えて不安になったのかもしれません。
彼の心情面や経済面を考慮し、結局は墓じまいをせずにいます。
お人好しだと別の親戚には言われましたが、元々一人でも反対者がいたら、墓じまいをするつもりはありませんでした。
そのようなわけで、古くからある民営墓地で管理料は5千円ほどですが、そちらの費用も私が払い続けています。
私もそれほど余裕のある暮らしではありませんが、子どもの将来を思うと新しいお墓を建ててよかったと思っています。
最初こそ、困ったことになったという気持ちはあったものの、あのお墓がまだ存在することに安堵している自分に気づきました。
いとこだけでなく、どうやら私にとっても心の拠りどころとなっていたようです。
今回は3つの体験談を紹介しました。
そして、相談したり話し合ったりできる距離感であったこと、この点もかなり大きいと思いますよ。
仲が悪いとまではいかなくとも、歳をとるとともに親戚と疎遠になっていくことは珍しくありません。
事情によっては家族の中で問題を抱え、親子間・兄弟間で絶縁状態などという話を耳にすることもあります。
自分に当てはめて考えた場合、どの体験談も是非の感想は分かれそうですね。
あなたならどうするでしょうか。
お墓を買う時のよくあるトラブル
ここでは実際にあった様々なトラブルを取り上げます。
代金の支払い、契約等のトラブル
- 墓石代を全額支払ったのになかなか着工しない
- 打ち合わせで決めたお墓と実際に完成したお墓の見た目が違っていた
- 永代使用料は安かったが墓地の指定石材店から法外な代金を請求された
- 宗教不問のはずがお墓を建てる際になって檀家になるよう要求された
- 先祖のお墓が遠方の寺にあり、改葬と墓じまいをしたら高額な離檀料を請求された
- 民営墓地なら自由だと思っていたが、指定石材店があり型にも規制があった
- 公営墓地の抽選で当選したが、利用条件を満たしていないとして契約できなかった
- 契約後に事情が変わり解約を申し入れたが、墓地側に永代使用料は返せないと言われた
主に近年では寺院や石材店との問題が多いようです。
お寺と檀家の関係性ばかりでなく、家族のあり方や価値観も昔とは変わり、お墓はいらないと考える「墓離れ」は全年代で増える傾向にあります。
先祖のお墓があってもつきあいは薄れ、お寺にすれば常識であっても通じない場合もあるでしょう。
また何とか離檀を防ごうと、強引な手段に出る住職も中にはいるわけですね。
石材店にも同じことが言えます。
実は民営墓地を経営する法人には、複数の石材店が関わっているケースが多いんですよ。
そういう墓地ですと自ずと石材店も指定されることになりますね。
そして、お墓を購入する消費者側にも問題がないわけではありません。
公営墓地の利用条件を満たしていなかったというのは、完全に申し込んだ人の確認不足です。
知識不足、確認不足は詐欺被害の要因ともなりますので、事前の確認はしっかりとしておきましょうね。
細かいことは口約束で済ませがちですが、支払いに関する契約書は必ず作ってもらってください。
永代使用料に関しては裁判になった例もあります。
また、どの墓地にも規定というものがあり、守らないと解約されたり違約金を請求されることもあります。
墓地の規定も理解した上で、慎重に選びましょう。
家族や親戚とのトラブル
- 新しい墓に両親の遺骨を改葬したが、話していなかった親戚に文句を言われた
- お墓を建てたのに、妻が実家のお墓に入ると言い出して困っている
- 次男の自分が両親と同居して面倒を見てきたが、長男が祭祀(さいし)承継者の権利を主張し揉めている
細かく挙げればきりがありませんが、お墓を建てる時に揉めるのは「墓地の場所」「誰が(誰まで)入るのか」「承継者が誰か」という問題が大半を占めます。
嫁ぎ先のお墓に入りたくない、夫と一緒のお墓に入りたくないという女性が増えていることは、新聞やテレビでもよく取り上げられていますね。
なぜそう望むのか理由をしっかりと聞き、自分の感情を押しつけるのではなく、相手の心情を理解することが第一です。
お墓の話に限らず、そうでなければ「話し合い」にはなりませんよね。
祭祀承継者に関しては、管理料を払いたくない等の理由で、長男が権利を継ぎたくないという逆のパターンもあります。
実際に、現代では必ずしも長男が家を継いでいるわけではありません。
長男でも婿養子になる人は珍しくなく、弟や姉妹が家を継ぐこともありますね。
そもそも少子化・核家族化で「家を継ぐ」という概念も薄れつつあり、家族や兄弟間だからこそ揉めてしまうという側面もあります。
中にはこじれて裁判にまで発展する場合もありますが、そんな事態を避けるためにも普段からの話し合いは必要なのです。
そして、お墓には墓参りをして供養してくれている親類も関係してきますよね。
特に墓じまいをする場合はちゃんと話を通しておきましょう。
お墓にかかる税金
お墓の購入の際、費用以外で気になるのは税金や管理料ですね。
わかりやすく簡単にまとめてみました。
消費税
墓石代には当然かかりますが、管理料にもかかります。
ちなみに一般的なお墓の管理料の相場は5,000~15,000円です。
お墓の土地は買うのではなく墓地から借りるものなので、永代使用料には消費税はかかりません。
固定資産税
課税対象外となり、固定資産税は発生しません。
永代使用料と同じ理由で土地は資産ではないためです。
相続税
お墓は「祭祀財産」に当たり、遺産ではないため相続税はかかりません。
祭祀財産とはお墓の他に仏壇・位牌・神棚などがあり、一般の相続財産とは異なりますので、生前にお墓を建てておくことで相続税の節税にもなります。
祭祀承継者は一人と定められていて、喪主となる立場の人がなることが一般的ですが、故人が指名した人や親族の話し合いで決められるケースもあります。
お墓を購入するのに初めて まとめ
今回はお墓を建てた人の体験談、実際にあるトラブルを紹介しました。
参考になりましたでしょうか。
お墓に入るのは自分でも、供養して護っていくのは子どもや親戚たちです。
後々に揉めごとにならないような配慮も必要だということがわかりましたね。
墓地を決めるには交通の利便性や費用だけでなく、規定も理解しておかなくてはなりません。
そして墓地・石材店ともに、細かい支払いの部分まで、契約書という正式な形で契約内容を残しておきましょう。
お墓は供養するだけの場所ではなく、家族や親類縁者の「心の拠りどころ」となり得る大切な場所です。
そんな大切な場所を護っていくためにも、トラブルになりそうな不安の芽は、一つでも多く取り除いておいきたいものですね。
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