親の介護はいつか必要になるだろうと思っていても、実際にそんな日が来ることを想像したくはないものです。
親が元気でなくなることは悲しいですし、他にも不安はたくさんありますよね。
特に今は自分の生活で精一杯、貯金もないという人は、想像する度に強い不安に駆られてしまうのではないでしょうか。
今回は親の介護にかかる費用、安くする方法などを取り上げていきます。
親の介護は、回避できない現実
介護と一口に言っても千差万別、親の状態によって様々なことが考えられます。
まず真っ先に思い浮かぶのは認知症の介護でしょうか。
急な病気や怪我などの可能性もありますし、それが原因で認知症になってしまうケースもあるのです。
入院しても必要な治療が済めば、当然のことながら退院となりますね。
場合によっては経過をみる通院に介助をともなうこともありますし、本格的に介護を始めなければならない状況になるかもしれません。
そうなった時、どのような介護をするのか、具体的に考えてみたことはありますか?
在宅介護を希望する親は多く、子も介護しながら一緒に暮らしたいと思う人は多いでしょう。
心情敵には在宅介護をしたくても、仕事との両立などを現実的に考えると、困難な人もいるはずですね。
仕事をやめるとなると収入は途絶え、給付金などでやり繰りするのも限界があるのではと思ってしまいます。
お金の心配が要らない人なら理想的な介護ができるでしょう。
でも親子ともに蓄えが十分でない人はどうすればいいのでしょうか。
介護の形を大きく左右するもの、それはやはり費用です。
施設に預けるのには費用がかかりますが、それは在宅でも同じことですよね。
親の介護は避けては通れない道です。
介護にはどれくらいの費用がかかるのか、まずは相場から見ていきましょう。
親の介護費用の相場は
平成30年度の生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」によりますと、4年以上の介護をした人の割合は、介護経験者全体の4割を超えています。
そして介護費用の1ヵ月の平均は7.8万円、住宅改造や介護用ベッドの購入などの一時費用の合計は平均69万円という数字が出ています。
単純計算をすると、介護費用総額の平均は498万円となります。
心構えとしては500万円はかかると思っておいた方がいいということになりますが、これは
あくまでも平均の数字です。
先の見えない介護にはそれ以上かかる可能性も考えられますね。
介護に備えているお金がないと、費用を払えないのではと悲観的に考えてしまう人もいるかもしれません。
漠然とした想像で不安になるよりも、まずはしっかりと情報を把握しておきましょう。
介護者の負担の面から言っても、介護サービスの利用は不可欠です。
それでは介護保険サービスを利用した場合の自己負担額から見ていきます。
居宅サービス
居宅(在宅)サービスを利用する場合は、利用できるサービスの量や支給限度額が要介護度別に定められています。
サービスには訪問介護のホームヘルプ、通所介護のデイサービスなどがありますが、1ヵ月当たりの限度額は次の通りです。
- 要介護1 : 166,920円
- 要介護2 : 196,160円
- 要介護3 : 269,310円
- 要介護4 : 308,060円
- 要介護5 : 360,650円
限度額の範囲内でサービスを利用すれば1割、一定以上所得者は2~3割の自己負担が必要となります。
限度額を超えてサービスを利用する場合は、超えた分を全額自己負担しなくてはなりません。
身体介護でホームヘルプを利用する際の利用者負担(1割)は1回につき以下の設定となっています。
- 20 分 未 満 : 165円
- 20 分 以 上 30 分 未 満 : 248円
- 30 分 以 上 1時間 未満 : 394円
- 1時間以上1時間半未満 : 575円
また、掃除・洗濯・買い物などの生活援助のサービスもあります。
- 20分以上45分未満 : 181円
- 45 分 以 上 : 223円
他にも通院時の乗車・降車等介助のサービスもあり、1回につき98円で利用できます。
次に通所介護のデイサービスで、通常規模の事業所を7時間以上8時間未満利用した場合の費用を見てみます。
- 要介護1 : 645円
- 要介護2 : 761円
- 要介護3 : 883円
- 要介護4 : 1,003円
- 要介護5 : 1,124円
事業所の規模や所要時間によって設定されていますので、おおよその目安となります。
また食費やおむつ代などは、別途負担する必要があります。
介護保険施設
介護保健施設を利用する場合、サービスにかかる費用は1割(一定以上の所得がある人は2~3割)の負担額となり、居住費、食費、日常生活費の負担も必要になります。
ただし所得の低い人、1ヵ月の利用料が高額になった人は、別に負担の軽減措置が設けられています。
まずは施設の種類と1ヵ月辺りにかかる費用の目安を見てましょう。
属する地域、要介護度、施設の形態、居室の種類、職員の配置などによって異なります。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
入所者が可能な限り在宅復帰できることを念頭に、常に介護が必要な方の入所を受け入れ、入浴や食事などの日常生活上の支援、機能訓練、療養上の世話などを提供します。
新たに入所する要介護1・2の人は、やむを得ない理由がある場合以外は利用できません。
介護老人保健施設(老健)
在宅復帰を目指している方の入所を受け入れ、入所者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、リハビリテーションや必要な医療、介護などが提供されます。
介護療養型医療施設
長期にわたって療養が必要な人の入所を受け入れ、入所者が可能な限り、自宅で自立した日常生活を送ることができるように、機能訓練や必要な医療、介護などが提供されます。
どの施設の利用も要介護度が上がるほど負担金も増しますが、数字はあくまで目安ですので、それぞれの地域での確認が必要となりますよ。
そして所得の低い人や、1ヵ月の利用料が高額になった場合には、負担の軽減措置が設けられていますので、該当する人は申請して利用するようにしましょう。
出典:厚生労働省 公表されている介護サービスについて
親の介護は早く始めるほうが良い
人は誰しも加齢というものには抗えないものですよね。
脳の働きも老化とともに自然に衰えて、物忘れが多くなったり、判断力などの低下も見られるようになります。
認知症の場合もそういった自然な老化現象のように見えがちで、家族であっても早い段階で気づくことは難しいことかもしれません。
治療によって症状が少し緩和したり、進行を遅らせることはできますが、治すことができないのが認知症です。
日常生活に大きな支障を来していないからといって、「まだ介護するほではないから大丈夫」という判断は、先々の負担を更に重いものにしてしまう可能性もありますよ。
今も尚、地域の包括センターに相談するのは、介護が必要になってからという認識の人が多いようですね。
自分たちでは本当にどうしようもなくなってから、初めて相談するケースもあると聞きました。
介護保険サービスには、市町村を主体とした介護予防や日常生活支援総合事業も含まれています。
要介護認定は要介護度1~5の他に、要支援度1~2、非該当という段階がありますね。
要支援度1、或いは2と認定された場合、包括センターにケアプランを作成してもらい、介護保険の予防支給で様々な介護予防サービスを受けることができます。
ただし居宅介護と同様に、1ヵ月当たり、次のような支給上限額が定められています。
- 要支援1 : 50,030円
- 要支援2 : 104,730円
また居宅以外に特定施設入居者生活介護という方法もあり、指定を受けた有料老人ホームや軽費老人ホームを利用することもできますよ。
サービス費用の利用者負担(1割の場合)は1ヵ月当たり5,500~9,600円が目安となり、入居費用や日常生活費は別途負担となります。
費用やサービスには地域によって違うものもありますので、包括センターにケアプランを作成してもらう際に、十分な検討と確認を怠らないようにしましょうね。
要支援に満たない非該当の場合、介護支給・支援支給の対象外となります。
しかしケアマネジメントに基づき、介護予防・生活支援サービス事業や、すべての高齢者が利用可能な一般介護予防事業のサービスを受けることができます。
日頃から高齢の親を見守り、適切なサービスを適切な時期に始めることが大事なのではないでしょうか。
そういった広い意味では、高齢の親の介護はもう始まっているのです。
出典:厚生労働省 公表されている介護サービスについて
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/
介護方針は最初から決めておく
経済面の不安を和らげるために
介護方針は早くから決めておくことをお勧めしますが、まずは経済面に対する不安を少しでも和らげておきましょうね。
自分の職場で介護休暇・介護休業の取得は可能か、介護休業給付金の支給を受けても結局は離職せざるを得ない場合、どうすべきかなども考えておく必要がありますね。
また介護サービスや介護施設の利用などの介護費が、医療費控除の対象となることも知っておくことです。
確定申告の際、何が必要となるのか、しっかりと知識を得ておかねばなりません。
高額医療費には「世帯合算」という仕組みもあり、同じ社会保険に加入している家族の医療費はまとめて申請することが可能です。
70歳以上の人は医療費すべてが合算対象となるんですよ。
例えば夫婦で複数の病院に医療費を支払っている場合など、個人ではなく世帯合算を申請することで、還付金の増額が見込めることでしょう。
また「高額医療・高額介護合算療養費制度」というものもあり、高額介護サービス費を申請すると超過分が払い戻されます。
いずれも申請しなければ控除も払い戻しも受けられませんので、注意が必要ですよ。
そして大きな問題にもなっているのが、いわゆる高齢者の「薬漬け」状態です。
この多剤服用の副作用には、ふらつきや記憶力の低下などが見られ、6種以上の薬剤の服用でリスクはもっとも高まります。
だからといって、自己判断で急に服用を中断したりしてはいけませんよ。
一番良いのは「お薬手帳」を持参し、かかりつけの医師か薬剤師に相談することです。
高齢者の身体への負担を減らすとともに、服用する薬剤の減少は節約にもなりますね。
これは前述の親を見守るということにも繋がります。
このように、経済面では様々な制度を利用し、それでも払えないのなら、あらゆる相談窓口に足を運んで打開策を探ることもできます。
看取りまで見据えた介護方針
「お金がない」という不安は、時として人の心から余裕を奪ってしまうものですね。
でも介護で一番大切なものは何でしょう。
答えはもちろん、親の気持ちと自分の気持ちです。
ケアマネージャーと介護プランを検討するにも、要介護度が低いうちから最適な介護サービスを利用し、この先どうなっていくのかということを理解しておく必要があります。
その道筋をきちんと理解した上で、看取りまで見据えた介護方針を立てておくことが理想ですね。
人生の最終段階で受けたい医療や治療、或いは受けたくない医療や治療について、話し合ったことがないという人の割合は、実に5割以上にのぼっています。
理由を多かったものから3つ挙げます。
- きっかけがなかったから
- 必要性を感じていないから
- 知識がなく何を話し合っていいかわからないから
確かに話し合うタイミングは難しいものですし、元気なうちは必要性を感じず、最終段階の治療の知識がなければ何を話せばいいのかわからないでしょう。
自分で意思表示できなくなった場合に備えて、あらかじめ意思表示を書面で残しておくことに賛成な人は6割を超えますが、実際に作成している人は1割未満にとどまっています。
最期を迎える場所を選ぶ上で重要だと思うことの順番は次のようになっています。
- 家族等の負担にならないこと
- 体や心の苦痛なく過ごせること
- 経済的な負担が少ないこと
- 自分らしくいきられること
- 家族等との十分な時間が過ごせること
皆さんにも当てはまるポイントは多いのではないでしょうか。
そして最期を迎える場所として住み慣れた自宅を希望する人は8割を超えます。
自宅以外を希望した人の理由でもっとも多かったのは、「介護してくれる家族等に負担がかかるから」で5割以上を占めました。
家族の負担にはなりたくないと思っても、やはり自宅で最期を迎えたいのが本音だという人が多いようです。
当然だと思いますし、それは誰もが理想とする形かもしれませんね。
症状が重篤化するほど自宅での介護は難しくなりますし、急変した時の対応など、本人にも家族にも不安があるのではないでしょうか。
互いにとって最善の道を選ぶには、やはり話し合い、理解し合うことが重要となりますね。
介護方針を考える際には、しっかりと看取りまでを見据え、親子で同じ方向を向いて歩んでいきたいものです。
出典:国税庁 介護保険制度下での介護サービスの対価に係る医療費控除の取扱いについて(情報)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/h30/07/index.htm出典:厚生労働省 高齢者における医薬品の適正使用と安全管理
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/11/dl/s1120-7b01.pdf出典:厚生労働省 平成29年度人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/saisyuiryo_a_h29.pdf
親 の 介護、お金がない!まとめ
今回は親の介護について、「お金がない」と不安に思っている人、介護の費用が気になっている人、安くする方法はあるのかと悩んでいる人に向けて話を進めてきました。
親の介護にかかる費用の相場など、参考になりましたでしょうか。
居宅介護で利用できるサービスの費用、施設を利用する際の負担額、そして様々な支援サービスや事業を紹介しましたが、金額はあくまで目安です。
地域を越えて利用できるサービスもありますが、ほとんどの場合は市町村が主体となっていますので、この機会にぜひホームページなどで確認してみてくださいね。
介護を終えた人の中には、どんなに一生懸命やり尽くしたとしても、「もっと何かできたんじゃないか…」とどこかに悔いを感じている人も少なくありません。
せめて最後まで気持ちは通じ合っていたと信じたいものですが、認知症で意思疎通が困難になってしまうと、確信が持てずに心細くなることもあるでしょう。
そんな時に互いを思いやり、話し合った思い出は、介護を続ける気持ちに力を与えてくれるものになると思います。
お金の心配ももちろん大事です。
いろいろな手段があることを知識として備え、乗り越えていきましょう。
そして、その日のために、親子で話し合ってみてくださいね。
すべての人にとって、介護がただ辛いだけのものにならないことを望みます。
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