老後の心配は誰しもが感じるものですが、独身となると更に不安な人も多いのではないでしょうか。
老後に必要な資金はどのくらいなんだろう?
老後の夢はあるけど現実とのギャップは?
そんな疑問を考える上でヒントになるように、今回は独身男性のケースを取り上げていきます。
独身貴族の栄華と末路
独身の理由にもいろいろありますよね。
結婚はしたものの離別や死別といった理由もありますし、結婚できない・結婚しないという未婚の人たちも少なくありません。
私の知人であるKさんは、独身生活を謳歌しているうちに結婚のチャンスを逃してしまいました。
結婚願望がなかったわけではないのですが、未婚のケースに当てはまりますね。
20~30代のKさんは、それはもう生き生きとしていましたよ。
バブル時代の真っただ中で、その恩恵を大いに授かったタイプです。
私をはじめとする同年代の知人・友人たちが結婚し、家庭生活や子育てなどに奮闘していても、どこ吹く風といった感じでした。
確かに独身生活は気楽で楽しい面も多いですよね。
特に30代くらいですと、女性独身者は現実的に物事を捉え、賢く効率的な「婚活」なるものに取り組む印象がありますが、男性の場合はどうでしょう。
もちろん、すべての独身男性がそうだというわけではありませんよ。
Kさんの場合は、「まだまだ大丈夫」「結婚しようと思えばいつでもできる」といった調子で、余裕を持って独り身を楽しんでいました。
趣味の車に贅沢にお金を費やし、私には何やらわからないパーティーやイベントなどの参加にも積極的で、デートも女性が喜ぶようなお洒落で豪華なものだったようです。
これぞ「独身貴族」と、まさに絵に描いたような生活ですよね。
しかし40代を過ぎた頃から、その生活は徐々に変わり始めます。
幾つになっても結婚は可能ですが、さすがに40代以上となると厳しくなるものです。
しかしながら、こればかりは縁というもので、その縁に恵まれなかったKさんは独身のまま現在に至ります。
そしてこのまま迎えそうな老後の問題を現実的に考えるようになりました。
考えるほど不安になり寂しくなるそうで、時折その胸の内を私に明かしてくれるのです。
不安としては、やはり経済面に関するものが大きいと彼は言います。
家族がいても経済的問題が不安要素であることは同じですよね。
でも独り身であるために問題を共有できる相手もおらず、彼の心細さを推し量ると切なくなってしまいます。
そこで、独身男性の老後に必要な資金などを調べてみました。
男性の単独世帯であることを前提として、まずは生活費を見ていきましょう。
出典:厚生労働省 平成29年 国民生活基礎調査の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa17/
独身男性の老後費用
男性単独世帯の生活費
男性単独世帯の消費支出の平均は、60歳以上で1ヵ月当たり153,503円、65歳以上では155,155円という調査結果が出ています。
消費支出は食費・住居費・光熱費・保険医療費など、生活を維持するための支出を言い、これが生活費や家計費と呼ばれるものになります。
ちなみに税金や保険料、貯蓄などの非消費支出は含まれません。
単純に1年当たりの金額を計算すると、60歳以上は1,842,036円、65歳以上は1,861,860円の生活費が必要ということになりますね。
厚生労働省の資料では男性の平均寿命は81.09歳ですので、次は81歳までにかかる生活費を総額として計算してみます。
- 60~81歳までの生活費の平均総額 = 37,157,904円
- 65~81歳までの生活費の平均総額 = 29,789,760円
- 70~81歳までの生活費の平均総額 = 20,480,460円
あくまでも平均寿命を目安としての算出ですが、65歳以上では3,000万円近く、70歳からでも2,000万円は必要ということになってきますね。
しかし、これは日常の生活費だけです。
税金等の非消費支出も加わってきますし、自宅の修繕が必要になることもあるでしょう。
平均寿命は延び続ける傾向にあります。
高齢になるほど、病気や怪我での入院などの急な出費もあり得ますし、介護が必要な状態になることも想定しておかなくてはなりません。
そして現実として葬儀費用の問題もあります。
できれば自分で準備をしておけるくらいのゆとりが欲しいものですよね。
生活費以外の支出も考え合わせると、上で算出した生活費の平均総額の倍は必要となる可能性もあるのです。
生活費を補てんする手段
内閣府の調査によりますと、男性単身世帯65歳以上の年金を含む収入は、1ヵ月当たり10万円未満が37.4%、10~20万円未満が36.3%、20万円以上が25.3%となっています。
貯蓄の質問に「貯蓄はない」と答えた人が46.2%ともっとも多く、経済的な暮らし向きについては男性単身世帯の48.4%、約5割が「心配である」と回答しています。
上で挙げた男性単身世帯65歳以上の平均の生活費は155,155円でしたね。
これに税金や保険料も加わってくるのですから、貯蓄がないと答えた人の多さにも頷ける気がします。
では具体的にどういう補てんの手段があるのでしょうか。
老齢年金の繰下げ支給の制度
繰下げには、老齢基礎年金の繰下げと老齢厚生年金の繰下げがあります。
老齢年金は、65歳で請求せずに66~70歳までの間で申し出た時から繰下げて請求することができ、請求した時点に応じて最大42%増額されます。
年金所得者の確定申告不要制度
公的年金等による収入が400万円以下で、かつ公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下の場合、確定申告は不要です。
ただし還付を受けるには確定申告の提出が必要となります。
高額医療費制度
医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月(歴月:1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する制度です。
上限は年齢や所得によって異なっていましたが、平成29年より70歳以上の上限額の持直しを段階的に行っています。
保険の見直し
若い頃に加入した生命保険をそのままにしていたり、将来が不安だからといって闇雲に同じような複数の保険に加入したりはしていませんか?
過剰な保険料は家計を圧迫するだけですので、本当に必要なものかをきちんと見直し、時にはもっと得な保険はないかなどの比較検討も大切です。
働く
まず、何よりも大事なことは健康を維持することですよね。
元気なうちはまだまだ働くことができますし、経験豊富なシニア層を求めている職場もあります。
収入を得ることによって年金の繰下げ受給も利用しやすくなりますよ。
在宅でできる職種もありますので、積極的に行動してみましょう。
以上、考えられる主な補てんの手段を挙げてみましたが、基本的に自分の収入や支出をしっかりと把握しておくことが前提となります。
例えば1ヵ月の支出のうち、自分が何にどれくらい支払っているのかを書き出してみるといいでしょう。
無駄なものはないか、抑えられるものはないかと検討するには、一番有効な手段です。
その上で、どれくらいの収入が望ましく、足りない分はどういう方法で補てんするのがいいかを考えてみてくださいね。
出典:政府統計の総合窓口(e-Stat) 家計調査 家計収支編 単身世帯
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0002190004出典:厚生労働省 平成29年簡易生命表の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life17/index.html出典:内閣府 平成29年版高齢社会白書(全体版)1 経済
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/zenbun/s1_3_1.html出典:日本年金機構 年金の繰下げ受給
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-02.html
出典:国税庁 公的年金等を受給されている方へ
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/campaign/h25/Dec/03.htm出典:厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuir
独身男性の孤独解消法
「独りでも平気」「独りの方が気楽でいい」という人もいますが、そうではない人もたくさんいますよね。
自分が孤独だと感じる場合、解消法を考える前にその原因を探る必要があります。
「独身だからに決まってるじゃないか!」と怒られそうですが、もし少しでも結婚願望があるならば、思い切って婚活をしてみるという方法もありますよ。
熟年結婚もさほど珍しくなくなりました。
現代の婚活は、前向きで柔軟な概念の元に多様化と大きな広がりを見せており、それは徐々にシニア層にも浸透しつつあります。
「熟年婚活」と呼ばれているようですが、60代どころか70代、80代の婚活パーティーなどもあるんですよ。
結婚相談所は会費が高いと感じる人には、ネット上の大手婚活サイトの利用が最適ではないでしょうか。
ただし詐欺被害などにあわないためにも、利用する際は登録人数の多い大手の婚活サイトを選ぶようにしてくださいね。
そして「結婚願望などない」という人は、とにかく社会との繋がりを大切にすることです。
何かしら仕事をしていれば自然に繋がりは保てますが、退職後は家にこもりがちになっている人はいませんか?
心まで閉ざしてしまい、精神的に孤立した状態を自ら作り出してしまっている可能性もありますよ。
少しだけ意識を変えてみて、次のような行動から始めてみませんか。
散歩に出てみて近所の人に会ったら挨拶をする、外食をした時は帰り際に「ごちそうさま」と言って店を出る、買い物をしたらレジ担当者に「ありがとう」と言って帰るなど。
当たり前のことでも何気ないことでも、挨拶や感謝の言葉を口にするというのは気持ちのいいものですよ。
言葉をかけていいのかわからないという時は、会釈する程度でもいいでしょう。
そして、もし反応が返ってこなくても気にしないことです。
ご近所さんや客に対して無反応な態度を示すなど、向こう側に問題があるのですからね。
趣味があれば、同じ趣味を持つ人を見つけて交流を持つのもいいですし、久々に昔の友人に連絡をしてみるのもいいですね。
自炊の経験が少ないという人は、節約のためにも自分で料理に挑戦してみるという手もありますよ。
意外と楽しくて、料理が趣味になったという男性もたくさんいます。
それに家の周りを綺麗にしてみたり、道に落ちているゴミを拾ったりという行動も、社会に貢献しているという実感を持たせてくれます。
挨拶がやがて会話になり、馬が合う新しい友人ができるかもしれませんね。
そして一番大切なことは「自分を感じる」ということです。
天気が良くて清々しい、風が心地良い、星が綺麗だといったような些細な感覚で構いません。
その感覚を失わないことが「自分を感じる」ことであり、生きている喜びや実感を無意識に刻みつけてくれるはずです。
ひとり = 孤独ではありません。
心を閉ざしてしまう前に、自分から積極的に「繋がり」を見つけていきましょう。

自宅があればリバースモーゲージ
近頃話題の「リバースモーゲージ」という言葉を、皆さんは耳にしたことはありますか?
持ち家である自宅を担保にして、住み続けながら融資や貸し付けを受ける制度です。
社会福祉協議会が行っているものと、民間の金融機関が行っているものの2つに分けられ、社会福祉協議会が実施するものは「生活福祉資金貸付制度」と言います。
民間の場合は金融機関によって条件が異なりますが、一定の所得以上を条件とし、対象年齢も比較的若めの設定が多いようです。
融資金を一括して受け取ることもでき、用途もほぼ自由で、利用者がゆとりある老後生活を目的とした融資と言えますね。
これに対し、生活福祉資金貸付制度は低所得者または低所得世帯が対象で、一定の居住用不動産を担保として生活資金を貸し付ける制度です。
65歳以上は高齢者として利用できますが、あくまで生活の支援が目的ですので、1ヵ月当たり30万円以内、要保護者の高齢世帯では生活扶助額の1.5倍以内という上限があります。
利子負担が民間の金融機関より低いので、長期利用という点で考えればメリットになるでしょう。
生活費の心配さえなくなればいいという人には、検討してみることをお勧めします。
独身だと、家も土地も売ってしまうという手段も考えるでしょうが、この制度を利用すれば最後まで自宅で暮らすことも可能ですよね。
生活が苦しく、貯蓄もなく不安だという独身男性は、市区町村の社会福祉協議会に相談してみてくださいね。
出典:厚生労働省 生活福祉資金貸付制度
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatsu-fukushi-shikin1/index.html
独身男性が老後に必要な資金 まとめ
今回は独身男性が老後に必要な資金はどれくらいか、生活費はどれくらいかかるのかという話を中心に進めてきました。
参考になりましたでしょか。
ああ、Kさんの話を忘れていましたね。
彼は定年退職後、新しい職場を見つけて働いていますが、一軒家に独り暮らしです。
そこで私は早速、リバースモーゲージの情報を伝えようと訪ねてみました。
以前の寂しそうな表情はなく、生き生きとしていて少し若返ったようなKさん。
めかし込んでいたので理由を尋ねると、「お友だち」と会う予定があるとキラキラした笑顔で答えてくれました。
やはり知り合いが明るく元気なのはいいことですね。
こちらも元気をもらった気分になります。
現代の社会を生き抜くには厳しい現実もありますが、決して悪いことばかりではないはずですよ。
70代、80代となっても「将来」は続き、きっと誰もが「夢」を持ち続けることでしょう。
Kさんの熟年結婚の報告を待ちながら、私も夢に向かって突き進んでいきたいと思います。
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