60歳で定年を迎えても、再雇用や再就職などで働き続ける人はたくさんいますね。
平均寿命は男女ともに80歳を超え、今や人生100年時代とも言われ始めています。
そうなるとどうしても気になるのが経済面です。
今回は60歳で再就職した場合の平均年収はどう変わるのか、経験や資格を活かせるケースも交え、シニアの働き方について考えていきたいと思います。
60歳で再就職したら年収はどのくらい
内閣府の平成30年版高齢社会白書によりますと、60~64歳の平均月収は男性が17万円で女性は16万6千円という数字が出ています。
これを単純に計算して年収とした場合、男性は204万円、女性は199万2千円となり、男女合わせた60~64歳の平均年収は201万4千円ということになりますね。
原則として年金受給が始まる前ですし、定年にともなった雇用形態の変化が原因だと思われます。
定年年齢は60歳のままで、その後は改めて再雇用という形式をとっている企業が多く、再雇用の際には労働条件が変わることがほとんどです。
正規雇用から非正規雇用となる割合を、具体的に数字てみてましょう。
非正規雇用者の割合は、男性が55~59歳で12.2%、60~64歳では52.3%と大幅な上昇を見せています。
女性は55~59歳で60.8%、60~64歳では76.7%と、男性ほどの上昇幅ではないものの、やはり非正規雇用者の割合は増えているのが現状です。
勤務日数や勤務時間を減らされることも珍しくありません。
やはり60歳というのは人生の大きな節目になっているようですね。
それでも平成29年の60~64歳の就業率は66.2%で、10年前より約10%も伸びているんですよ。
しかも年々増加傾向にあります。
何歳まで仕事をしたいかという質問に、現在仕事をしている60歳以上の40%が「働けるうちはいつまでも働きたい」と答えています。
次いで「70歳くらいまで」「65歳くらいまで」「75歳くらいまで」「80歳くらいまで」の順に続き、約8割が高齢になっても働きたいという意欲を示しているのです。
元気な限り、現役でいたいという気持ちはほとんどの人が持っているでしょう。
私もそうです。
でも純粋な労働意欲だけが原動力ではないという現実もありますね。
老後が何年続くものかは自分でもわからないものです。
貯蓄などの準備が十分だと思われる人でも、本当にそれで足りるのかと不安を感じている人が多いくらいですから、蓄えが十分でない人は尚更ではないでしょうか。
いずれにしても、60歳が迎える節目は厳しい現実であることには違いありませんね。
出典:内閣府 平成30年版高齢社会白書(概要版)
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/gaiyou/30pdf_indexg.html出典:厚生労働省 平成30年賃金構造基本統計調査 結果の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2018/index.html
経験が必要な資格を持っている場合
「士」のつく仕事は昔から潰しがきくと言われていますが、実際、定年を過ぎてもそのまま勤務し続けたり、中には自ら起業する人も少なくありません。
看護師や介護士、薬剤師などの医療関係業界も、定年後も求人が多いのは確かです。
再雇用で勤務日数や時間を減らされて収入が激減するようであれば、別の職場を探すという手段もありますね。
資格に加え、経験も重視される職業となれば、資格を持たない人に比べれて職探しもし易いことでしょう。
しかし、資格の有る無しを問わず、60代ともなると体力減退という共通の問題が発生します。
こればかりはどうしても避けられない問題ですよね。
定年後も同じ条件で働けるとしても、それは健康上のリスクともなり得ますので、単純に喜んでばかりもいられません。
無理を重ねて体を壊してしまっては、本末転倒な結果になる可能性もあるのだということを、私たちはしっかりと考えておくべきだと思います。
出典:内閣府 平成30年版高齢社会白書(概要版)
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/gaiyou/30pdf_indexg.html出典:厚生労働省 平成30年賃金構造基本統計調査 結果の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2018/index.html
経験や資格を生かしてもパートがおすすめ?
定年後、勤務日数や勤務時間を「減らされる」という表現を使いましたが、むしろ、その方がいいという人もたくさんいます。
「働けるうちはいつまでも働きたい」と思うなら、確かに頷ける選択ですね。
実は短時間労働者のうち、男性でもっとも賃金の高い年齢階級は60~64歳なんですよ。
1時間当たりの賃金は男性の平均が1,349円、女性は1,095円で、男女合わせると平均1,162円という数字になります。
平均年収を見ても、年金受給前の暮らし向きには厳しいものがありますが、健康状態を保って現役であり続けたい人は、65歳までなんとか頑張るしかありませんね。
私の友人に看護師をしていた60代の女性がいます。
定年を過ぎても職場から求められ、以前と変わらぬ勤務をこなしていました。
ところが徐々に体力的に厳しくなり、やむなく退職することになったのです。
他の病院や施設からスカウトもありましたが、彼女はしばらく体を休め、今後の人生と働き方について熟慮を重ねた様子でした。
そして選んだのが、訪問看護のパート勤務です。
その名の通り、自宅療養をしている患者宅を訪れ、看護の作業を行う仕事ですね。
病院勤務と勝手が違い、彼女も最初は戸惑うこともあったようですが、「自分らしく生きられる道を選ぶことができた」と、今はとても喜んでいます。
実はこの訪問看護のパートは、求人がどんどん増え続けているらしいんですよ。
業務の形態や内容にもよりますが、時給も1,500円前後から2,000円を超える場合もあり、全年代を通して見ても十分に水準の高い部類です。
老いは誰にだも訪れます。
有資格者であっても無資格者であってもです。
シニア層にとって、まだ決して広いとは言えない再就職の間口。
だからといって「間口が狭い」と文句を言っているだけでは何も変わりません。
将来のためにどんな働き方をするべきか、広い視野で世の中を見渡し、積極的に情報を得ようする意識が重要ではないでしょうか。
出典:厚生労働省 平成30年賃金構造基本統計調査 結果の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2018/index.html
副業なら「宅配クラウドソーシング」
将来の働き方を考える上で、一つ、具体的な話をしてみましょう。
大手宅配業者のドライバー不足が深刻化していることは、ここ数年ニュースなどで何度も取り上げられていますよね。
そこで登場したのが、一般人が空き時間を利用して、自動車やバイク、自転車などで配達を行う宅配クラウドソーシングです。
専用のアプリから申し込み、免許証や本人確認の審査などで認められれば、誰でも働くことができるんですよ。
宅配クラウドソーシングアプリは要は仕事の仲介役で、荷物を運んでほしい人と運ぶ人を結びつけてくれるわけですね。
仕事をする時間や移動可能な範囲内の集荷・配送を、そのアプリを見て自由に選択することができるのですから、空いた時間の副業にはピッタリではないでしょうか。
そういったアプリは複数あり、急成長を見せている副業の一つとなっています。
まだエリアが限定されているところも多いようですが、今後は間違いなく全国に広まることが見込まれますね。
定年後に勤務時間が減り、空き時間にできる副業を考えている人は、こういう働き方もあるということを知っておいた方が有利ですよ。
合うか合わないかは人それぞれですので、これを機に自分に合った職種を探してみるのもいいでしょう。
まだまだ余力があるうちは、できるだけ時間を有効活用したいものですね。
60歳 再就職 平均年収 まとめ
今回は60歳という人生の節目を越えた年代を中心に、気になる再就職や平均年収の現状、経験や資格を活かせる場合の働き方などについて考えてみました。
いかがでしたでしょうか。
平成29年度、従業員31人以上の企業約16万社のうち、高齢者雇用確保措置の実施済み企業の割合は99.7%となり、希望者全員が65歳以上まで働ける企業は75.6%となっています。
将来は更に年金受給開始年齢が繰り下げられるとも予想されていますよね。
そうなれば、国は企業に更なる雇用延長や定年廃止を求めるようになるでしょう。
国は高齢化に対応した社会づくりを目指し、次々と法改正を行い、新制度を打ち立ています。
人によってはありがたく、人によっては厳しい社会となりそうです。
国が目指す「高齢化に対応した社会」は「高齢者が対応しなくてはならない社会」とも言えますからね。
改めて言うまでもなく、勤労は憲法で定められた義務です。
でも私たちは、憲法を守るために働いているわけではありあませんよね。
家族のため、自分のため、或いは社会のために、働きたくて自ら働いてきたのです。
ですから定年後の働き方というものも、単に制度に従うばかりでなく、自分に合った働き方を模索して「自分で選んだ道だ」と胸を張れる人生を歩んで欲しいのです。
定年後はゆっくりのんびり暮らしたいという夢は、もはや過去の幻影のようなものですね。
若い人たちのように常に情報のアンテナを立て、私たちも積極的に歩む道を見極めていきましょう。
出典:内閣府 平成30年版高齢社会白書(概要版)
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/gaiyou/30pdf_indexg.html
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